父: 今回は「葉酸」だ。
葉酸は水溶性のビタミンB群の仲間で、「プトレイルグルタミン酸」ともよばれる。
娘: 葉酸という名前からすると、野菜の葉に多く含まれるの?
父: そういえるね。葉酸は、ある細菌の増殖に必要な因子として、ホウレンソウの葉から発見された。
ホウレンソウの葉はラテン語でfoliumなので、folic acid (葉酸)という名前が付けられたのだ。
娘: 分かりやすい名前ね。葉酸はどんな働きをするの?
父: 葉酸は体内に吸収され、還元反応を受けて、活性型の「テトラヒドロ葉酸」となり、「補酵素」として働く。
「テトラヒドロ」とは水素が4個ついた、という意味だ。
娘: またまた補酵素ね! どんな代謝の酵素に働くの?
父: 酵素反応の中には炭素を付加する反応があるが、活性化葉酸は「炭素の受け渡し」に働く。
難しいところだから、分からなくても問題ないよ。
娘: では、葉酸が欠乏するとどうなるの?
父: 「悪性貧血」とよばれる貧血が起こる。血球を調べると、「巨赤芽球」とよばれる、
異常に大きい赤血球の前駆細胞が見られる。ところで、「貧血」は知ってる?
娘: 赤血球の数が減少する病気でしょう?
父: 大体それでいいけど、正確には、ヘモグロビン(赤血球にあり、酸素を運搬するタンパク質)の
濃度が低下する状態をいう。皮膚や粘膜が蒼白になり、酸素が足りなくなるので、
心拍数が増加したり、息切れしたりする。
娘: そうなんだ。ところで、”悪性”ということは治りにくいの?
父: 原因が分かるまでは、治りにくいので”悪性”という名前が付けられたが、
現在では葉酸の投与で治るので、悪性ではなくなったな。
娘: では、悪性貧血といわれても、そんなに心配することはないのね。
葉酸が欠乏すると、どうして貧血になるの?
父: 活性葉酸は、とくに「核酸」(DNAとRNA )の合成に必要だ。
赤血球は骨髄でどんどん産生されるが、そのために核酸の合成が必要であり、
核酸合成が障害されると貧血になるというわけだ。
娘: 理屈が分かると面白いね! 核酸合成に必要なビタミンは葉酸だけなの?
父: するどい質問だ。実は、葉酸のほかに、「ビタミンB12」が必要だ。
ビタミンB12は葉酸と共同して、赤血球を作るのに働く。ビタミンB12の話は次回にしよう。
娘: 葉酸欠乏では、貧血のほかにどんな症状が出るの?
父: 白血球の合成も障害されるので、免疫力が低下したり、消化管の働きが障害されたりする。
妊娠中に不足すると、「神経管閉鎖障害」が起こり、死亡することもある。
娘: 葉酸はどんな食品に多く含まれるの?
父: 緑黄色野菜や果物に多く含まれるが、壊れやすいので、新鮮な野菜や果物がよい供給源だ。
レバーにも多く含まれる。腸内細菌でも合成されるので、バランスのよい食事をしていれば、
不足する心配はほとんどない。妊娠中は多めに摂ることが必要だが、
サプリメントは避けるほうが安心だな。
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