宝箱へ戻る

からだの不思議
今からでもからだを大切にしたいとの思いで
森 正敬先生(ハンドルネーム:げのむ様)に
お願いし、「げのむトーク」を連載いたします。
No60
げのむトーク

 染色体上のテロメアが老化に関係する
父: 「X染色体」について話してきたが、ついでに染色体一般について
    勉強しておこう。ヒトの染色体数は覚えている?

娘: 「常染色体」は44本(22本が2組)で、「性染色体」は男性がXY
   (X染色体1本とY染色体1本)、女性はXX(X染色体2本)で、
   合計46本でしょう?

父: そのとおり。46本のうち半分の23本が父親から、残りの23本は
   母親から受け継いだものだ。この半分、すなわち23本の染色体に
   「ゲノムDNA」が分かれて存在している。つまり、ヒトはゲノムを
   2セットもつ「2倍体」の生物だ。

娘: 教科書に染色体の図が載っていたけど、染色体の長さは
   染色体によって違うよね。

父: 常染色体は、長いほうから1番〜22番の番号がつけられている。
   最も長い第1染色体の長さは、最も短い第22番染色体の
   数倍ほどある。X染色体の長さは、かなり長いほうの常染色体くらい
   あるが、Y染色体は短く、X染色体の半分くらいだ。

娘: 染色体は棒状で、真ん中あたりが細くくびれた形をしているね。

父: そのとおり。細くくびれた部分を「セントロメア」という。染色体が
   「複製」され「細胞分裂」が起こるときに、染色体のセントロメアの部分に
   「紡錘糸」が結合し、両方向へ引っ張ることによって染色体が分かれ、
   2つの「娘細胞」に分配される。

娘: 細胞分裂と染色体分裂の図も教科書で見たけど、すごいしくみね。
   セントロメアの位置は染色体の真ん中にあったり、中心から
   離れた場所にあったりするよね。

父: セントロメアから染色体の両端までの長さは異なり、長いほうを
   「長腕」、短いほうを「短腕」とよぶ。染色体の両端には「テロメア」と
   呼ばれる部分がある。

娘: テロメアというと、最近、テロメアが「老化」と関係するという話を
   聞いたけど、ほんと?

父: よく知っているね。最近の話題の一つだ。テロメアは
   「テロメアDNA」とタンパク質から出来ており、すべての染色体の
   両端に存在し、染色体末端を保護する働きをしている。ところが、
   細胞分裂ごとにテロメアの長さが短くなることが分かり、細胞の老化、
   ひいてはヒトの老化と関係すると考えられている。

娘: テロメアの長さは、どうして細胞分裂ごとに短くなるの?

父: 細胞が分裂するときにゲノムDNAの複製が起こるが、
   DNA複製のしくみのせいで、テロメアの末端部分が複製できず、
   したがって、細胞分裂ごとにどんどん短くなる。

娘: それで、最後にはどうなるの?

父: テロメアがどんどん短くなって一定の長さに達すると、細胞は
   それ以上分裂できなくなる。これが「細胞老化」とよばれる。このことから、
   テロメアは「細胞分裂の回数券」と呼ばれることもある。

娘: 「クローン羊」の「ドリー」の寿命が普通より短いと聞いたけど、
   テロメアが関係するの?

父: よい質問だ。ドリーのテロメアは短かかったことが分かっている。
   羊の体の細胞から作られたので、最初の細胞から短かかったわけだ。
   ヒトの場合も、一般に、加齢とともにテロメアが短くなることが
   知られている。

娘: そうすると、テロメアを伸ばすことが出来れば、老化を
   防止することができるの?

父: すごい質問だ。実は、テロメアを伸ばすことが出来る
   「テロメラーゼ」という酵素があるが、通常の体細胞はもっていない。
   しかし、「生殖細胞」や「幹細胞」など特殊な細胞はテロメラーゼを
   持っており、これらの細胞のテロメアは短縮しない。また、「がん細胞」も
   テロメラーゼを持っていることが分かっている。

娘: がん細胞は死なないし、老化もしないと聞いたけど、テロメラーゼを
   持っているためなのね!

父: テロメアやテロメラーゼには、まだまだ分かっていないことが多いが、
   将来、がんの治療や老化防止に利用できるかもしれないね。ただし
   老化は、テロメアのほかに「活性酸素」や「DNA障害」、
   「ミトコンドリア障害」、「ホルモン」、「サイトカイン」、「免疫機能」など
   多くの因子が関係していると考えられ、大変複雑だ。