宝箱へ戻る

からだの不思議
今からでもからだを大切にしたいとの思いで
森 正敬先生(ハンドルネーム:げのむ様)に
お願いし、「げのむトーク」を連載いたします。
No61
げのむトーク

今日はY染色体です

父: 今日は「Y染色体」について勉強しよう。ヒトの「性染色体」は
  「男性がXY」,「女性がXX」。女性の2本のX染色体のうち1本が
  不活性化されていて、X染色体の活性は、男女とも同じになっている
  ことは話したね(第57回)。

娘: 「X染色体の不活性化」ね。ということは、染色体の活性から見ると、
  男性が女性に比べて、Y染色体の活性をを余分に持っていることに
  なるのね。Y染色体はどんな働きをしているの?

父: Y染色体はヒトの性を決定する。つまり、Y染色体を持っていると
  男性になり、もっていないと女性になる。

娘: そうなんだ。X染色体は性染色体だけど、性の決定には直接
  関与しないのね。スポーツ選手の「セックスチェック」にY染色体の有無を
  調べるのは、そのためね(第57回)。では、Y染色体があると、
  どうして男性になるの?

父: Y染色体があると男性になることは以前から分かっていたので、
  Y染色体上に「男性化遺伝子」探しが行われた。そして1990年、
  ついに「性決定遺伝子」(男性化遺伝子)が発見され、
  「SRY(正しくはイタリック)遺伝子」と命名された。 Sex-determining
  Region on Y chromosome の頭文字からとられた。SRY遺伝子は
  Y染色体の短腕の端に近いところに存在する。この論文を読んだ
  ときにはワクワクしたな。

娘: SRY遺伝子を発見した人は、もっとワクワクしたでしょうね。
  それで、SRY遺伝子はどんな働きをしているの?

父: 胚が発生するある時期に、未分化の生殖腺(「生殖腺原基」)が
  出来るが、SRY遺伝子は生殖腺原基を「精巣」に分化させる
  働きをする。一方、SRY遺伝子、すなわちY染色体がないと、
  生殖腺原基は「卵巣」に分化する。

娘: 男性になるか女性になるかが、1個の遺伝子で決まるなんて
  びっくりね!でも、1個の遺伝子だけで、男女のいろいろな性質が
  決まるのは信じられないな。

父: SRY遺伝子は「男性化のマスター遺伝子」で、生殖腺が一旦
  精巣になるか卵巣になるか決まると、その後の「性分化」は主として
  「ホルモン」を介して行われる。すなわち、精巣からは「男性ホルモン」が
  分泌されて男性化が起こり、卵巣からは「女性ホルモン」が分泌されて、
  女性化が起こる。

娘: すごい仕組みね! でも、SRY遺伝子だけで性が決まるという
  証拠はあるの?

父: するどい質問だ。マウスを用いた実験で証明された。メスになる
  はずの受精卵に「sry遺伝子」(マウスの場合は小文字を用いる)を
  導入する(組み込む)実験が行われた。「トランスジェニックマウス
  (遺伝子導入マウス)」とよばれる手法だ。すると、驚いたことに、
  男性器をもつオスのマウスが生まれたのだ。つまり、メスのマウスに
  sry遺伝子を導入するだけで、オスになったというわけだ。

娘: わー ドラマチックな実験ね。では、オス化したマウスは子供を
  作ったの?

父: またまたよい質問だ。そのsry遺伝子導入マウスは交配は
  出来るが、「生殖能力」はない。さらに調べてみると、精巣はあるが、
  精子がないことが分かった。つまり、「無精子症」だね。

娘: どうして精子が出来ないの?

父: Y染色体には、SRY(またはsry)遺伝子のほかに、およそ
  100個の遺伝子が存在する。そのなかのいくつかは、「精子形成」に
  必要なことがわかった。つまり、生殖能力には完全なY染色体が
  必要なのだ。

娘: 性の問題は奥が深いね。ところで、性決定が問題になる病気は
  あるの?

父: 答えはイエスだ。ときどきXY染色体をもつ女性(「XY女性」)が
  生まれる。原因を調べると、Y染色体のSRY遺伝子を含む部分が
  欠けていることが分かった。また、SRY遺伝子が変異して、機能を
  失った例も見つかっている。

娘: では、XX染色体の男性(「XX男性」)はいるの?

父: やはり、ある割合で生まれる。原因は、X染色体の上に
  SRY遺伝子を含む染色体断片がくっついてる。X染色体の先端部分と
  Y染色体の先端部分が似ており、この部分がときどき組み変わる
  (「転座」という)ことがあるためだ。

娘: 話は変わるけど、すべての動物の性はY染色体で決まるの?

父: そうではない。性の決定は動物によって異なる。哺乳類の
  ほとんどはヒトと同じく「XY型」だが、一部のネズミは「XO型」
  (オス:XO;メス:XX)で決定される。また、鳥類やヘビなどでは
  「ZW型」(オス:ZZ;メス:ZO)で決定される。そのほかにも
  いろいろあるよ。

娘: 今日はびっくりの連続だったなー。


山都町の石橋通潤橋前を散歩する人
すっかり”げのむトーク”を
サボってしまいました。
男と女の違いを染色体で
確実に表せるのはすごい事です。
Y染色体ヒトの「性染色体」は
「男性がXY」,「女性がXX」。染色体の活性は、
男女とも同じになっている
Y染色体を持っていると男性になり、
もっていないと女性になる。
「性決定遺伝子」(男性化遺伝子)が発見され
SRY遺伝子は「男性化のマスター遺伝子」で、
精巣になるか卵巣になるか決まると、
その後の「性分化」は主として「ホルモン」を
介して行われる。
難しいお話ですが興味ある内容ですね。
染色体により良くも悪くも遺伝することは
避けて通ることが出来ないようですね。