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からだの不思議
今からでもからだを大切にしたいとの思いで
森 正敬先生(ハンドルネーム:げのむ様)に
お願いし、「げのむトーク」を連載いたします。
No80
げのむトーク

ヒトの祖先はA型だったらしい
今回は、ABO血液型の最後です。

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娘: 前回の続きだけど、「血液型」があるということは、
  なにか意味があるのでしょう?

父: その問題を考えるためには、「ABO型の祖先」が分かると
  参考になると思う。ABO型を決める「遺伝子座」は1つなので、
  もとは何型で、ABO型がいつごろ分かれたか、という問題だ。
  遺伝子座とは、両親由来の2つの「対立遺伝子」を
  合わせたものと考えてよい。

娘: 「遺伝子の進化」の問題ね。まず、サルの仲間の
  血液型を調べればいいのでは?

父: すご〜い! 研究者の素質があると思うよ! 実際に、
  ヒト以外の「霊長類」(サルの仲間)の血液型が調べられた。
  その結果、不思議な分布をしていることが分かった。例えば、
  オランウータンはヒトと同じくABO型だが、チンパンジーは
  A型とO型で、ゴリラはB型のみといった具合だ。

娘: わ〜面白いね。それで、いちばん古い型は何型だったの?

父: 多くの霊長類の血液型が調べられ、「遺伝子の系統樹」が
  作成され、検討された結果、ABO型の「共通祖先遺伝子」は
  A型であると考えられている。

娘: ということは、祖先遺伝子は、O型のH抗原に、
  ある糖(詳しくは「N−アセチルガラクトサミン」)を結合させる
  酵素の遺伝子だったということね。

父: そういうことだね。その「A型酵素遺伝子」が進化の途上で、
  別の糖(詳しくは「ガラクトース」)を結合させるように変異して
  「B型遺伝子」となったり、酵素活性を失うような変異が起こって
  「O型遺伝子」になったということになるな。

娘: そうすると、祖先のA型遺伝子によって作られるA抗原、
  つまり「A型糖鎖」は、昔なにかの働きをしていたの?

父: それが分かっていないのだ。糖鎖はいろいろな細菌や
  ウイルスが感染するときの足場(正式には「受容体」)に
  なることが多いので、ある「病原体」に対して、A型糖鎖をもつ
  細胞は感染しにくい、などという可能性が考えられるな。

娘: では、なぜA型、B型、O型の3つの遺伝子共、
  残っているの?

父: これも想像だけど、進化の途上で、たとえば
  その病原体がなくなり、A型の有利な点がなくなった。
  A型遺伝子は、たまたまB型遺伝子とO型遺伝子に
  変わったが、どの遺伝子も利点・不利点がなく、たまたま
  ヒトの集団中に広がったと考えることが出来る。

娘: 「生物の進化」というと、「ダーウィン」の「自然選択説」を
  習ったよ。環境に適した種が選択され、生き残るのいう
  説でしょう? 血液型の進化はこれに合わないみたいね?

父: するどいコメントだ。アバウトな説明をすると、自然選択説に
  従う進化に加えて、自然選択にかからない進化があることが
  発見され、「進化の中立説」または「中立進化説」とよばれる。
  有利でも不利でもない性質は中立説に従うと考えてよい。
  中立進化は「木村資生博士」(1924〜1994)による、
  わが国が誇る大発見だ。

娘: 血液型の進化は中立説で説明できるということね。
  血液型について、分子メカニスムから遺伝や輸血での問題、
  性格との関係、進化にまで話が広がって、面白かったよ。