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からだの不思議
今からでもからだを大切にしたいとの思いで
森 正敬先生(ハンドルネーム:げのむ様)に
お願いし、「げのむトーク」を連載いたします。
No74
げのむトーク

 タバコはなぜやめられないか?
娘: 「タバコ」をやめたいと思っている人は多いようだけど、
  なかなかやめやれないみたいね。どうしてなの?

父: 多くのアンケート調査が行われているけど、どの調査でも、
  喫煙者のおよそ3分の2がタバコをやめたいと思っている。しかし、
  自分の意志と努力でやめられる人は1割以下だ。

娘: やめられない人は意志が弱いということ?

父: そうではない。タバコをやめられないのは「ニコチン依存症」
  という脳の病気のためだ。最近の研究によって、ニコチン依存症の
  仕組みが分かってきた。

娘: 難しそうだけど、簡単に説明して。

父: 脳の中には「アセチルコリン」という物質があり、大切な働きを
している。詳しくは、「神経伝達物質」として働いている。
  ところが、ニコチンはその構造がアセチルコリンと似ており、
  アセチルコリンと同じ働きをするのだ。

娘: つまり、タバコに含まれるニコチンが吸収され、脳にいって、
  アセチルコリンの代わりに働くということね。

父: そのとおり。ニコチン(およびアセチルコリン)は「神経細胞」の
  「ニコチン受容体」(正確には「ニコチン性アセチルコリン受容体」)に
  結合する。すると、その神経細胞から「ドパミン」という物質が
  放出される。このドパミンが大量放出されると、気持ちをよくする
  作用がある。この経路は「脳内報酬回路」と呼ばれている。
  脳が「ニコチンをくれると気持ちをよくしてあげる」という感じかな。

娘: それで、タバコを吸い続けるとどうなるの?

父: 絶えずニコチンが入ってくるので、アセチルコリンを作る
  必要がなくなり、アセチルコリンの合成をサボるようになる。
  そこで、タバコが切れるとどうなると思う?

娘: あっ 分かった! アセチルコリンが急には合成できず、
  欠乏するので、脳はニコチンを欲しがるのね。

父: そのとおり。「アセチルコリン欠乏」のために
  脳の働きが悪くなり、イライラし、仕事に集中できなくなる。
  これが、「ニコチン依存症」の「禁断症状」、正しくは「離脱症状」だ。
  脳はニコチンが入ってくるまで要求し続けるので、やめられない。

娘: 意志の力は脳の命令には勝てないというわけね。
  タバコを自主的にやめられる人と、やめられない人がいるけど、
  なにが違うの?

父: よい質問だが、理由はよくわかっていないと思う。最近、
  「薬の効き方」が人のよって異なるのは、「DNAのわずかな違い」
  (「DNA多型」という)によることが分かってきたが、
  ニコチン依存の程度の違いも、DNAの違いによると思うな。

娘: では、タバコをやめたいけどやめられない人は、
  どうすればいいの? 

父: タバコがやめられないのは「ニコチン依存症」という病気だから、
  治療する必要がある。しかしその前に、タバコに対する認識を
  改めることと、”禁煙するぞ”という固い決心が欠かせない。
  タバコが”千害万害あって、一利も半利もない”ということを
  ナットクしておくことが必要だ。

娘: タバコの健康被害について勉強してきたけど、「経済的な問題」も
  あるよね。タバコを吸う人はタバコ代が馬鹿にならないと思うよ。

父: 喫煙者は生涯で数百万円、多い人では1千万円くらい使う
  計算になる。これを健康的な娯楽に使うと、人生がかなり
  豊かになると思うな。ちなみに、日本人の「タバコの年間消費量」は
  2400億本で、約4兆円が煙に消えている。

娘: 新政府が必死になって削り出した予算が3兆円だから、
  4兆円は大きいね。また、タバコによる健康障害で、医療費も
  増えているのでしょう?

父: それも大変重要だ。タバコの害による「医療費」は3兆円とも
  4兆円とも計算されている。全医療費が約30兆円で、
  その1割だから、これも大きいね。たばこ税については、
  増税になるかどうかではなく、国民の健康を守ることを
  考えるのがスジだ。

娘: しかも同時に、医療費を大幅に削減することができるね。
  ところで、タバコを吸う人は、タバコは「嗜好品」だというけど、
  どうなの?

父: それについては、次回に考えてみよう。
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