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からだの不思議
今からでもからだを大切にしたいとの思いで
森 正敬先生(ハンドルネーム:げのむ様)に
お願いし、「げのむトーク」を連載いたします。
No77
げのむトーク

 ABO血液型はどうして決まる?

父: 第68〜71回に血液の話をしたので、今回は
  「血液型」の話をしよう。血液型については、知っている?

娘: 「ABO血液型」は知っているよ。私はA型で、
  A型は一番多いと思う。

父: ヒトの血液型は、実は、数十種類知られているが、
  輸血の時に問題になるのは、「ABO型」と「Rh型」だ。
  日本人のABO型の分布は、A型が約40%、O型が約30%、
  B型が約20%、AB型が約10%だ。

娘: ”日本人の”ということは、国によって違うの?

父: 血液型の分布は、地域や民族によって異なる。例えば、
  南アメリカのインディオは90%以上がO型であることが
  知られている。ところで、A型でも2種類あるのは知っている?

娘: AA型とAO型でしょう? B型はBB型とBO型。
  O型はOO型のみ。AB型はAB型のみ。

父: そのとおり。AとBはOに対して「優性」で、逆に、
  OはAとBに対して「劣性」だ。AとBは優劣はない。
  AとBはOに対して「共優性」ということもある。
  優性、劣性というのは優れているとか劣っているという意味
  ではなく、その性質が現れるか現れないかという意味だよ。
  では、ABO型の「遺伝」は知っている?

娘: 「メンデルの法則」にしたがって遺伝すると習ったよ。
  「家系図」を描いてみたら、私はAを父さんから、
  Oを母さんからもらったことが分かった。

父: 父さんはAO型、母さんはOO型だから、合ってるね。
  ABO型は遺伝形式から分かるように、「遺伝子」によって決まる。
  ヒトは2倍体の生物で、両親から受け継いだ2つの遺伝子
  (これを「対立遺伝子」という)を持っている。A型はA型遺伝子、
  B型はB型遺伝子、O型はO型遺伝子、AB型はA型遺伝子と
  B型遺伝子によって決まる。

娘: 遺伝は分かったけど、ABO型は何が違うの?

父: 「赤血球」の表面にある「糖鎖」(単糖が鎖状につながっている)
  の違いによって決まるのだ。赤血球の「膜タンパク質」に糖鎖が
  結合しているが、A型とB型とO型では、その構造が少しずつ
  違うのだ。

娘: 難しそうだけど、もう少し詳しく説明して。

父: まずO型では、5個の単糖がつながった糖鎖(5単糖)が
  ついている。これを「H抗原」という。一方A型では、5単糖のH抗原に
  「N−アセチルガラクトサミン」とうい糖がついて、6単糖になっている。
  これを「A抗原」という。

娘: ではB型の人は?

父: B型では、H抗原(5単糖)に、N−アセチルガラクトサミンの
  代わりに「ガラクトース」という糖がついて、6単糖になっている。
  これが「B抗原」だ。

娘: わ〜難しいね。AB型の人はA抗原とB抗原を両方
  持っているのね?

父: そのとおり。つまり、A型の人はH抗原に
  N−アセチルガラクトサミンを結合させる酵素
  (詳しくは「糖転移酵素」)を持っており、B型の人は
  ガラクトースを結合させる酵素を持っているのだ。

娘: ということは、AB型の人は二つの酵素を両方持っており、
  O型の人はどちらも持っていないということね。

父: そうなのだ。ところが、驚いたことに、ABO型が1つの遺伝子
  (正確には1組の「対立遺伝子」)で決まることが分かったのだ。

娘: えっ! 3つの型が、どうして一組(2つ)の遺伝子で決まるの?

父: するどい質問だ。A型酵素の遺伝子とB型酵素の遺伝子は
  事実上同じで、「塩基」(遺伝子の文字)のわずかな違い
  (これを「変異」という)があることが分かった。この違いによって
  「酵素タンパク質」のアミノ酸がわずかに異なり、結合させる
  糖の種類が違うという訳だ。専門的に言うと、「基質特異性」が
  少し変化したといえる。アミノ酸の違いは、
  わずか4個であることが分かっている。

娘: では、O型はどうなっているの?

父: O型の人は同じ遺伝子の違う場所に変異が入っており、
  その結果、遺伝子が壊れて働かなくなっている。つまり、
  6番目の糖を結合する活性が失われているのだ。「糖転移酵素」の
  「欠損症」ともいえる。もっとも、後で述べるように、
  デメリットはないけどね。

娘: わ〜 そうなんだ! 目からウロコね。ところで、
  ABO型は「輸血」の時に問題になるよね。

父: 次回にその話をしよう。