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からだの不思議
今からでもからだを大切にしたいとの思いで
森 正敬先生(ハンドルネーム:げのむ様)に
お願いし、「げのむトーク」を連載いたします。
No84
げのむトーク

お酒に強い遺伝子は2〜3万年前に生じた

 父: 前回は、[エタノール]が体内でできるか?という質問だったね。
     酵母は[エタノール発酵]でエタノールを作るが、ヒトはエタノール発酵の
     酵素を持っていないので、エタノールは作れない。

 娘: ではどうして、[アルコール脱水素酵素(ADH)]や
     [アルデヒド脱水素酵素(ALDH)]を持っているの?

 父: するどい質問だが、よく分かっていない。野生動物だと、
     自然発酵した果物や木の実などに含まれるアルコールの分解に
     はたらくのではないかと思う。

 娘: では、「ALDH遺伝子」にG型とA型があるのはなぜ?

 父: 「G型」は「活性型」で「A型」は「不活性型」なので、
    昔ある時期に、A型がG型から変異して生じたことは間違いない。
    ALDHがヒトにとって必要な遺伝子なら、G型は正常型で、
    A型は「酵素欠損症」といえるが、いまではG型もA型も生存する上で
    有利でも不利でもないので、「遺伝子多型」という。

 娘: G型からA型が出来たのがいつごろか分かっているの?

 父: ヒトの進化の話になるけど、「ミトコンドリア・イヴ」って知ってる?

 娘: うん 聞いたことがあるよ。ヒトの祖先はアフリカの
    1女性だったという説でしょう?

 父: よく知っているね。「ミトコンドリアDNA」の研究から、現代人の祖先は、
     20万年ほど前にアフリカに誕生したと考えられている。その子孫は
     中近東を経てヨーロッパや南北アジア大陸に移動し、
     1部は北アジアからベーリング海を渡ってアメリカ大陸へ移動したらしい。
     そして、2〜3万年前にアジアのモンゴロイドの中でG型からA型への
     遺伝子変異が起こり、それが広がったと考えられる。

 娘: そのときにはもうALDHが必要でなくなっていたのね。
     これって、「ABO血液型」の進化と似ていない?

 父: よく気がついたね。やはり、「ダーウィンの自然選択説」にかからない
     「中立進化」(第80回)と考えていいと思うよ。

 娘: 「GG型」か「GA型」か「AA型」かは経験的に大体分かるけど、
     はっきり調べる方法はあるの?

 父: 「アルコールパッチテスト」と「遺伝子検査法」がある。 どちらも病院で
     受けることになるが、検査をやっている病院とやっていない病院が
     あると思うので、あらかじめ尋ねるのがよいと思う。

 娘: 遺伝子検査ができるなんてびっくりね! 話は変わるけど、
     お酒を飲みすぎると肝臓が悪くなるのでしょう?

 父: アルコールを飲み過ぎると、肝臓に「中性脂肪」が蓄積して
    「アルコール脂肪肝」になる。飲み続けると「アルコール性肝炎」から
    「肝硬変」になり、さらに「肝がん」へと進む危険がある。

 娘: アルコールを飲むと、なぜ肝臓に中性脂肪がたまるの?

 父: 専門的になるけど、説明しておこう。アルコールの分解にも
     中性脂肪の分解にも、「NAD」という分子が必要なのだ。
     アルコールをたくさん飲むと、NADがアルコールの分解に使われて、
     脂肪の分解が出来なくなる。一方、脂肪の合成はむしろ高まる。
     その結果、脂肪が肝臓に蓄積し、飲酒を続けると肝臓が
     脂肪だらけになるというわけだ。

 娘: アルコールと脂肪がNADを奪い合って、アルコールが
    脂肪の分解を邪魔するということね。では、「肝炎」と「肝硬変」は
    どこが違うの?

 父: その話は次回にしよう。
今日はびっくりするような荒雨、冬と夏が
交互に来ているようで、梅の収穫も
だいぶん少ないのではと心配します。
庭の梨の花もいつもより早く落ちて
しまったようです。森先生のお話は
難しいけど興味ある事ばかりですね。
アルコールに強い人もやはり体の事を
考えて用心した方がいいようですね。
でも、そんな人に限って他人の意見は
聴かないのですよね。本人が自覚する
までどうしようもないことです。22/4/22