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からだの不思議
今からでもからだを大切にしたいとの思いで
森 正敬先生(ハンドルネーム:げのむ様)に
お願いし、「げのむトーク」を連載いたします。
No88
げのむトーク

耳垢と腋臭の不思議な関係

 耳垢の後半です。

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 父: 前回の続きだけど、耳垢に関係のある病気には「耳垢栓塞」
     のほかに「外耳炎」がある。耳掃除をしすぎると、外耳道の皮膚を
     傷つけてしまい、「湿疹」を起こす。さらに、細菌や真菌(カビ)が
     感染し、外耳炎を起こすことがある。

 娘: つまり、耳掃除はしすぎないことが大切ね。

 父: 湿疹がおこると痒くなったり黄色い分泌液が出たりするので、気になって
     耳掃除を繰り返すと、どんどんひどくなるので、注意が必要だ。

 娘: ところで、「耳垢」と「体臭」は関係するよね?

 父: そのとおり。湿性耳垢の人は「腋臭」、いわゆる「ワキガ」がある。
     両方の性質は完全に一致するんだ。

 娘: 耳垢と腋臭はあまり関係がなさそうに思えるけど、どうして関係するの?

 父: 実は、その両方に「アポクリン腺」が関係するんだ。

 娘: そのアポクリン腺ってなに?

 父: 哺乳動物には、汗を出す「汗腺」があるが、汗腺には「エクリン腺」と
    「アポクリン腺」の2つがある。エクリン腺は水分の多い分泌液、
    つまり普通の汗を出し、蒸発によって「体温を調節」する働きをしている。
    一方アポクリン腺は、「脂質やタンパク質を含む乳白色の分泌液」を出す。

 娘: アポクリン腺から出る分泌液はどんな働きをしているの?

 父: この分泌液は、皮膚の常在菌の作用で分解されて特異な臭いを発し、
     動物ではこれが異性を惹きつける「フェロモン」として働いている。

 娘: へ〜そうなんだ。でも、人の場合には、その臭いが敬遠されるよね。

 父: そのとおり。人の場合には、臭いの代わりに顔やスタイルなどの容姿が
     セックスアピールとして使われるようになった。つまり、臭いは
     ”昔大切、今迷惑”ということになるな。

 娘: それで、耳垢と腋臭がなぜ関係するの?

 父: ヒト以外の哺乳動物では、アポクリン腺が全身に分布している。
    動物が強く臭うのは、あまり水浴しないせいもあるけど、アポクリン腺が
    多いためだ。ところが、ヒトでは例外的に「エクリン腺」が全身に発達し、
    「アポクリン腺」は「腋の下」や「外耳道」などのごく限られた場所にだけ
    存在している。

 娘: それで、腋の下が強く臭うのね。では、耳垢や腋臭と
    「遺伝子」とはどう関係するの?

 父: よい質問だ。ごく最近、「耳垢と腋臭に関係する遺伝子」、つまり「W遺伝子」と
     「w遺伝子」が単離された。その結果、W遺伝子はアポクリン腺から分泌液を
     分泌するのに必要な遺伝子であることが分かった。

 娘: では、w遺伝子はどう違うの?

 父: w遺伝子はW遺伝子と「塩基(遺伝子文字)」が1個だけ異なり、
     そのせいでW遺伝子の機能を失っていることが分かったんだ。
     つまり、w遺伝子はW遺伝子が壊れたもので、アポクリン腺から
     分泌液を出すことが出来ない。

 娘: あっ分かった! だから、「ww型」の人は耳はカサカサだし、
    腋臭もないというわけね。

 父: そのとおり。ヒト以外の動物では「W遺伝子」は「生殖」に大切だが、
     ヒトでは不必要になったので、たまたま変異で生じた不活性なw遺伝子が
    集団の中に広がったと考えられる。これも「中立進化」(第80回)の例で、
     Wとwは「遺伝子多型」ということになるな。

 娘: すると、乾性の人は耳のアポクリン腺から分泌液が出ないよね。では、
    「乾性耳垢」ってなに?

 父: するどい質問だ。今では、死んで剥がれ落ちた細胞や
     ゴミが集まったものと考えられているよ。

 娘: 耳垢が乾性で腋臭がないほうが一般に喜ばれるけど、これが昔大切だった
     遺伝子が壊れたおかげなんて、びっくりね!
夏を思わせる暖かさで土手のシャクナゲも
美しく咲き乱れています。
湿性耳垢の人は「腋臭」、いわゆる
「ワキガ」があるとの事、主人は
湿性耳垢ですが
全然「ワキガ」の匂いには気が
付きませんでした。だけどとてもお風呂が
好きで、からだの匂いを気にしている様に
感じていました。私よりも清潔感のある
人です。「耳垢が乾性で腋臭がない方が
優勢」の様に感じていたのですが
遺伝子が壊れて生じた「中立進化」と
なるのですね。からだの一部の小さい
事も遺伝子は進化を続けているのです。
不思議ですね。