娘: 友達のお父さんが「糖尿病」で、最近目と腎臓が悪くなった
みたいで心配しているよ。糖尿病は怖いね。
父: 多分「糖尿病性網膜症」と「糖尿病性腎炎」だと思うよ。この2つに
「末梢神経障害」を加えて、「糖尿病の3大合併症」というんだ。
娘: 糖尿病の定義はあるの?
父: これが結構難しいが、「インスリン作用の不足によって起こる高血糖を
主な症状とし、種々の代謝異常をきたす病気」だ。糖尿病を理解するためには、
血糖について知っておく必要がある。ところで、「血糖」とは何か知っている?
娘: 血中の「グルコース」、または「ぶどう糖」でしょう?
父: そのとおり。血糖はきわめて大切で、その濃度、すなわち
「血糖値」は厳密に調節されている。
娘: どうしてそんなに大切なの?
父: われわれのエネルギー源を考えてみよう。
食物中の「3大栄養素」の割合は知っている?
娘: 「3大栄養素」は「糖質」と「脂質」と「タンパク質」で、最も多いのは糖質でしょう?
父: そうとおり。国で定められている目標の割合は、糖質が50〜70%、脂質が
20〜25%、タンパク質が20%未満(男性60g、女性50g)だ。つまり、エネルギー
源の3分の2が糖質ということになる。では、糖質の消化、吸収は知っている?
娘: 米でも麦でもイモ類でも、主な糖質は「でんぷん」で、消化管の
消化酵素でグルコースに消化され、小腸から吸収されるんでしょう?
父: よく知っているね。吸収されたグルコースは血液に入り、血糖となる。食後に
血糖が上昇するのはそのためだ。ちなみに、「血糖値」は空腹時には
70〜90mg/dLに維持されており、食後は140mg/dLくらいまで
上昇し、2〜3時間で元へ戻る。
娘: 血糖はいろいろな臓器に取り込まれて使われるんでしょう?
では、空腹時は血糖はどこから来るの?
父: 大変よい質問だ。血糖はどんどん使われると同時にどんどん供給され、
一定の値に保たれる。もし供給が止まると、血糖は数分以内になくなってしまう。
では、食物から取り入れたグルコースは、一部は使われるけど、残りはどうなる?
娘: あっ そうだ。肝臓で「グリコーゲン」に変えて蓄えるんだ。
父: そのとおり。空腹時にはこのグリコーゲンを分解して血糖に変える。つまり、
肝臓では食事ごとにグリコーゲンの合成と分解が繰り返されているんだ。
娘: では、グリコーゲンがなくなったらどうなるの?
父: またまたよい質問だ。肝臓のグリコーゲンは、半日ほど絶食するとほとんど
なくなってしまう。すると、「体のタンパク質」(主に「筋肉タンパク質」)をアミノ酸に
分解し、アミノ酸から肝臓でグルコース、つまり血糖を合成するんだ。
専門的には、これを「糖新生」という。
娘: つまり、絶食時には自分自身の筋肉を食べているという訳ね!
父: そういうことになるな。体タンパク質の大部分は「筋肉タンパク質」だ。筋肉の主な
働きは運動や姿勢保持だが、「エネルギー貯蔵庫」としての働きも大切なんだ。
娘: そういえば、過度のダイエットをすると、脂肪だけでなくタンパク質も減るので、
よくないと聞いたよ。ところで、「脂肪」からは「グルコース」は出来ないの?
父: 脂肪(正確には脂肪酸)は分解されてエネルギー源になるけど、グルコースには
ならないんだ。グルコースは脂肪になるのに、逆は駄目なんだ。
娘: では、血糖が下がりすぎるとどうなるの?
父: その話は次回にしよう。
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