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からだの不思議
今からでもからだを大切にしたいとの思いで
森 正敬先生(ハンドルネーム:げのむ様)に
お願いし、「げのむトーク」を連載いたします。
No107
げのむトーク

ウイルスと発がん

 娘: 「肝炎ウイルス」による「肝がん」が、よく話題になっているね。
     放射線や発がん物質がDNAに傷をつけてがんができることは分かったけど、
     ウイルスも同じなの?


 父: いきなりすごい質問だ。ウイルスによる発がんについては、
    発見の歴史が面白い。
1911年、米国のラウス博士はニワトリに肉腫を作る
    ウイルスを発見し、「ラウス肉腫ウイルス」と名づけられた。


 娘: 最初のきっかけはニワトリのがんだったのね。これがヒトのがんと関係するの?

 父: そうなんだ。ラウス肉腫ウイルスは後に「レトロウイルス」であることが分かった。    レトロウイルスによる発がんの研究から、ヒトの「ウイルス発がん」の
    仕組みが分かってきたんだ。ラウス博士はこの業績により、
    
1966年のノーベル医学生理学賞を受賞している。

 娘: 「レトロウイルス」って何?

 父: ウイルスにはDNAのゲノムを持つ「DNAウイルス」と、RNAのゲノムを
    持つ「RNAウイルス」がある(第
22回)。「レトロウイルス」は
    「RNAウイルス」の中の1グループだ。


 娘: では、レトロウイルスはどんな特徴があるの?

 父: レトロウイルスが細胞に感染すると、ウイルスのゲノムRNAは
    DNAに写し取られる。DNAの情報がRNAに写し取られることを「転写」と
    いい、その逆なので、「逆転写」と呼ばれる。逆行、すなわち復古いう意味で、
    「レトロ」ウイルスと名づけられた。逆転写で生じたウイルスDNAは、
    宿主細胞のゲノムDNAの中に組み込まれる。


 娘: あっ分かった!ウイルスDNAが組み込まれる時に、ゲノムDNAに傷がつくのね?

 父: それも関係するが、もっと複雑なんだ。ラウス肉腫ウイルスを調べてみると、
    がんを起こす遺伝子が発見され、肉腫
sarcomaから「src(サーク)遺伝子」と
    命名された。ところが驚いたことに、src遺伝子はウイルスだけでなく、
    宿主細胞のゲノムにもあることが分かったんだ。ウイルス由来にものを
    「v−src遺伝子」、細胞由来のものを「c−src遺伝子」と呼んでいる。


 娘: わ〜 ややこしいね。もう一度分かりやすく説明して。

 父: 「レトロウイルス」が細胞に感染すると、「ウイルスRNA」は
    「逆転写」されて「ウイルスDNA」となり、細胞のゲノムDNAに
    中に組み込まれる。ついで、組み込まれたウイルスDNAは細胞のゲノム
    DNAから飛び出して、再びRNAとなり、完全なウイルスを作って、
    他の細胞に感染していく。


 娘: 自分のゲノムDNAの中で、ウイルスDNAが入ったり出たりしているなんて、
    気持ち悪いね。


 父: しかも、ウイルスDNAが細胞ゲノムDNAから飛び出すときに、
    細胞DNAの断片を持って飛び出すことがあるんだ。つまり、
    ラウス肉腫ウイルスが持っている「v−src遺伝子」は、
    もともとは宿主細胞の「c−src遺伝子」だったんだ。


 娘: でもどうして、v−src遺伝子ががんを引き起こすの?

 父: c−src遺伝子は「がん原遺伝子」(第103回)で、ウイルスによって
    運ばれている間に「異常活性化」されて「がん遺伝子」になったんだ。


 娘: がんウイルスも、やはり遺伝子に傷をつけてがんを起こすことが分かったわ。
    では、ヒトのがんを起こすウイルスにはどんなウイルスがあるの?


   (次回へ続く)
「ウイルスと発がん」
DNAが傷つき発がんすると
考えていましたが
ニワトリに肉腫を作る
ウイルスが発見されて
いたのですね。
「逆転写」と呼ばれる
「レトロウイルス」が発見され
遺伝子を傷つけて癌を発生
させるそうです。
内容が難しいので先生のトークを
しっかり読んで下さいね。
写真は長崎出島の様子を
写してみました。
外国の方も多くて、異国の地に
来ている様に感じました。